社員番号3番、創業からこれまでを見つめてきた顧問の上村に、ハルメクグループの過去、現在、未来について聞きました
ハルメクグループの「今」と「未来」を伝えるオウンドメディア「ハルイロ」をご覧いただきありがとうございます。編集長の入山です。
今回ピックアップするのは、ハルメクの良心、いや、生き字引? ハルメクの前身であるユーリーグの創業メンバーで、社員番号3番の上村顧問を徹底解剖します。出版社のようで出版社だけでなく、小売業のようで小売業だけでない今のビジネスモデルはどう生まれたのか。顧問としてこれからのハルメクに何を期待するのか聞いてきました。
(入山)早速ですが、担当していることを教えて下さい。
(上村)ハルメクの文化事業の企画会議やハルメク誌の編集会議に出席しています。それとハルメクホールディングスの品質管理部を管掌してますね。
(入山)前身のユーリーグ創業当時からはどんなことをされてきてますか?
(上村)ユーリーグのときは人事、経理以外は大体全部やってましたから。コールセンターもあるし、物流倉庫とかそういう部門を見てたときもあるし、通販雑誌「ふくふく」の編集もやってました。ずっとそういう役回り。最終的に副社長という立場で、コーポレート的なもの以外は全部やってました。
(入山)今の編集会議に出るきっかけは何だったんですか?
(上村)ある意味通訳みたいな役割かな。
宮澤さんが民事再生の時に社長として来たときは、ダイレクトマーケティングについてはよくご存知だったけど、出版業のことはよくわからなかった。だから、自分が当時の編集長や残ったメンバーたちとの間に入って翻訳する役回りをした。出版というコンテンツビジネスと、通販というダイレクトマーケティングビジネスの間を繋ぐような役割もあったかな。
(入山)経営再建で入ってきた宮澤さんと、上村さんも含めて当時の社員の人たちの間には色々ギャップがありそうですが?
(上村)宮澤さんはどう思ってるかわからないけど、私はどちらかというと宮澤さん寄り。それまでの経営はオーナー企業ということもあって、重要な部分が見えないことも多かったし、定性的な部分が多かった。それが、宮澤さんが入ってきたことで、一挙にオープンになって、人事評価なども公平にしていきましょうという感じになった。だから、宮澤さんがどうこうってことよりも、そうした経営の方が私は正しいと思ったし、変わったこと自体がいいことだと思ってたからね。
(入山)当時の宮澤さんが、今の編集会議の形を作ったとも聞きました。
(上村)定性的に作られるコンテンツビジネス(出版業)みたいなものも、きちんと効率化していく。一つでも二つでもメソッドとして確立して、後から入って来る人にもちゃんと継承できるようにするために始めたものだと僕は認識しています。
鉄板という言葉は使わない方がいい
(入山)当時は橋渡し役みたいなところを期待されていたと思うのですが、状況が変わった今は何を求められていると考えていますか?
(上村)一つはそれまでの経験の中から、あたりはずれの予測だったり、新しい切り口のヒントというものを提示しようと思っていますね。編集作業は、成功体験が先を閉ざすというか。雑誌の可能性をかえって失わせてしまうところがあると思うんですよね。なので「鉄板という言葉は使わない方がいい」って私はよく言うんだけど。
鉄板っていうのはある種の思考停止だからね。要するにこれが当たった、だからこれもう1回やってみようとか、これは外せないよねっていうことで、そのコンテンツが古くなっていく。
例えば終活なら終活、健康なら健康のテーマの時に、初めてそのテーマを扱ったときのように、そもそも終活って何よ?みたいなね。新鮮で根本的な問いみたいなものを出さないと本当にオリジナリティのある切り口って出てこないというのが私の考え。まあ、そういう警鐘を鳴らす役割ですかね。そして、そういう言葉って結構多くあるんだよね。
例えば鮮度って言うでしょ。その鮮度って何を意味しているのか?
鮮度という言葉の先に、それは誰にとっての鮮度かっていうことと、鮮度が指す意味は新しければいいんですか?という話があるよね。通販で言えば、新しくない既存の定番商品でも、提案として切り口が新しければ鮮度があると言えるかも知れない。
なので「鮮度のある商品をやりましょう」で終わらないのが大事なんじゃないかな。言葉を使ってる人ほど言葉に捕まっちゃうんですよ。落とし穴にはまっちゃうところが多くて。お客さんの目というか、新鮮な目で見れないことがあるからね。それを、気をつけてねって言うのが私の役割かな(笑)。
商品とコンテンツは同じ
(入山)この会社がユニークなところは、出版社だけでも、通販会社だけでもないというところですが、どうしてこういうビジネスモデルにつながったんですか?
(上村)大きいのは、商品とコンテンツは同じだと思っていたからかな。商品は商品、コンテンツはコンテンツって分ける発想ってなかったから。雑誌「いきいき」を作るときや、通販を始めるときに作った通販カタログの「ふくふく」も境目はなかったよね。
(入山)そうした考え方はどこから生まれたんですか?
(上村)ユーリーグの創業者と私は某通信教育会社の通販部だったんだよね。生徒が卒業して大学に入った後も、その子達と繋がっていたかったから、卒業後の新生活の生活必需品を販売する通販ビジネスが始まったんです。その経験から、「いきいき」が軌道に乗り始めた頃に通販ビジネスを始めたんだよね。
もう一つは、「いきいき」のお客さんに農家の人が割と多くて。読者の人が家で柿ができたからどうぞとかって送ってくれるわけ。あとは、特別な品種の豚を育てている養豚家の人が、これを他の読者の人にも提供したいっていうのもあった。その頃私達はおすそ分けって言ってたけど、おすそ分け通販っていうのをやってもいいんじゃないかっていうので、農産物や生鮮食品に関しては始まったところがある。
重曹もそうですね。今では当たり前のように使われているけど当時はなかった。大手が作る洗剤を使ってると、臭かったり肌に悪いという人たちがいて、重曹やクエン酸でも掃除ができるっていう本を書いた人がいて、それじゃその重曹をその掃除方法と一緒に売りましょうってなってね。その頃はまだ重曹がなかなか手に入らなかったから。
ユーリーグからいきいき、ハルメクへ
(入山)ユーリーグの時に作られたユニークなビジネスモデルがあって、その後今の体制になっていくわけですが、どう見られていますか?
(上村)会社としては最初に話をしたようにオープンになったことが大きいですよね。会社が何を考えて自分は何を目指すのかっていう関係性、位置づけが明確になったと思います。
(入山)会社が変わる時は、軋轢が生まれるものですが、越えられたポイントはどこだと思いますか?
(上村)私は読者を継続して守りたかった、減らしたくなかったしね。同じぐらい社員に会社を辞めて欲しくなかった。民事再生は私も含めた経営の失敗だから、読者と社員に迷惑をかけたくなかった。色々な会社に迷惑をかけてしまったのは事実なんだけど。
なので、民事再生っていう出来事があっても、社員にとっては職場環境が大きく変わることはなかったので相当数残ってくれた。事業運営が継続できたことで、読者も10万人を切ることはなかったからね。
恥ずかしい話なんだけど、やっぱり経営というかマネジメントがきちんとされていなかったから、それまでを変えるっていうよりも、ゼロから宮澤さんが作ったということ。それまで勢いで40万部近くまで行って、テレビ広告は打つわ新聞広告も全30段で打つわみたいな会社に、KPIを設定して、一つ一つ物流なら物流、コールセンターならコールセンターで基礎的な骨組みを作った。
ユーリーグ時代は勢いがあって、いろんな人が何役も果たしながら、カオスの状況の中で、当たるときは当たるみたいな感じ。それがうまく回っていたときは良かったけど、効率は悪かったし再現性がなかった。そこを宮澤さんがカチッとフレームワークにはめて、パラダイムを作って、KPIも揃えて、PDCA回していくっていう、会社としての枠組みを作っていった。私も含めてユーリーグからの社員はそれに違和感を感じなかったんだね。会社ってこうやるのねみたいなね。
(入山)ユーリーグ時代の良さを、宮澤さんが生かしたということなんでしょうね。
(上村)そうでしょうね。
ビジネスモデルという意味では、民事再生でも14万で下げ止まったっていうのは、やっぱり読者の方が習慣にしてくれていたことが大きいかな。「毎日私は寝る前に30分「いきいき」を読むんです。「ハルメク」を読むんです。それを読まないと、寝付きが悪いです。」だったり、「朝に人参ジュースを飲むのが日常なんです」とか、1日のサイクルの中に入ったものはなかなか除外しにくいですよ。
それぞれの色を出し、濃くしていって欲しい
(入山)最後の質問です。このハルイロは必ず未来の話で終わることにしているんですが、これからのハルメクグループの未来について期待していることをお聞かせください。
(上村)今、中途採用の人が増えてきて、前職の経験をみんな持って集まって来てるでしょ。一番私が危機感を持っているのは、その前職の経験の総和が薄められた集団になること。それは絶対嫌だなと。集まった人たちそれぞれの色をもっと濃くしたいな、濃くしてほしいなと思っている。
みんながもっと「自分の夢がここで実現できる!」って本当に思ってもらいたい。それが一番大きいですかね。前職の繰り返しだけはしてもらいたくない。前職でできなかったことを、ここに来たらできるようになったって言ってもらいたいね。
それができる会社であって欲しいし、そういう思いを持った人たちに集まって欲しい。
(入山)新卒でこの会社に入ってきてくれたプロパー社員に対してはどうですか?
(上村)純粋にこの会社で育った人たちは、重要だよね。今残ってくれてる人たちも新卒の人が多いですよ。プロパーの人たちは、初めて入った会社で本当に自分が何をやりたかったのか見つけるしかないです。成長できる仕組みっていうものは、会社で用意してね。それなりにこの会社は持ってる方だと私は思うんだけど。
(入山)上村さんはハルメクグループの未来の可能性、例えば30年後とか想像した時どう見てますか?
(上村)状態にこだわりはないんですよね。雑誌と通販であるということにこだわりはなくて、もっと新しい何かであればいいなと。そのイメージがね、明確に描ければ良いんだけど。
でもやっぱり50代以上の女性を顧客対象にするのは変わらないのかなと。その人たちをどのぐらい幸せにできるか。僕自身もそうなんだけど、基本は不安なんですよね。健康に対しても経済に対しても。不安がそれほどでもないなって思えれば幸せ。
今風に言えばコミュニティなんだけど、人間関係が良い距離感で営めるサポートができればいいなと思いますね。そのためには、いろんな形で、コンテンツでもいいし、エンターテインメントでも、ヘルスケアでも実現されているイメージですかね。
そういうことができるのであれば、今の業態にとらわれることはないんじゃないかと。
ハルメクが事業を拡大していくことで、日本のシニア層の人たちが幸せになっていって、海外の人がそんな日本を見て、リタイア後は日本に住みたいと言うような世界になったら楽しそうだよね。その時の一番のキーはなにかと言ったら「ハルメク」があることだったと。それには色々なインフラの整備が必要かもしれないし、もっとコンテンツなども必要かもしれない。
(入山)壮大なチャレンジですね!
(上村)できると思いますよ。多分そうなると思います。そういう条件は整ってるんだし。社員の人たちにはそういうポテンシャルのある会社だと思ってほしいよね。
(入山)さっきのお話に繋がっていくんですけど、前の仕事の色を薄めないで、ここでやりたかったことをやってほしいという先にそんな未来がありそうですね。
今日はありがとうございました。
編集後記
入社してすぐの頃、皆から「顧問、顧問」と親しみを持って声をかけられている上村さんは、一体何者なんだろう?というところからこの企画はスタートしました。あるときは品質管理部の人、またあるときは文化事業部の人。今回は過去の話も含めて率直にお話いただけました。常に柔軟な思考で、それでいてハルメク世代の1人として的確で示唆に富むアドバイスをしてくれる上村さんが見るハルメクの未来。そんな未来を目指して行きたいと思ったインタビューでした。
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