お客様の声に“しつこく”寄り添う。ハルメク独自のシンクタンク「生き研」
ハルメクグループの「今」と「未来」を伝えるオウンドメディア「ハルイロ」をご覧いただきありがとうございます。 女性誌販売部数No.1※雑誌として、多くの読者に支持されている「ハルメク」は、雑誌だけでなく、WEB情報サイト「HALMEK up」や通信販売、講座イベントなど多岐にわたり事業を展開しています。
今回クローズアップする「生きかた上手研究所」(通称・生き研)は、シニア女性市場を深く理解し、新しい価値を提供するためのハルメク独自のシンクタンク。
その取り組みや考え方、進化の背景を探るため、今回は広報室長の入山さんを聞き手に、生きかた上手研究所 所長の梅津さんにじっくりお話を伺いました。
※日本ABC協会発行社レポート(2024年7月~12月)
シニアを本気で知るために。生き研誕生ストーリー
入山真一(広報室長):生き研設立の経緯を教えてください。
梅津順江(生きかた上手研究所 所長):設立は2014年4月。社長の宮澤が「リアルな読者や顧客をきちんと理解したい」という強い思いを持って立ち上げました。
雑誌や商品を作るとき、お客様の声を反映するのが理想ですが、現場では制作側の都合でプロダクトアウトになりがち。お客様の目線に立ったものづくりを実現するために、顧客理解を深める部門が必要だと判断し、生き研が社内シンクタンクとして生まれました。
予算ゼロ、声かけ調査…泥臭く築いた顧客理解
入山:梅津さんが入社された2016年当時、生き研はどんな状態でしたか?
梅津:ちょうど雑誌が「いきいき」から「ハルメク」に変わったばかりで、会社全体も業績が底を打った頃でした。
それまでは、雑誌の読者満足度調査だけほぼ単独でやっている状態。でも、時系列で会社全体を計測するブランド調査も必要だとずっと提案していました。せっかく名前を変えたのだから、ブランドイメージや認知度をきちんと把握して、理念を反映させるべきだと。
ただ「予算がない」「今やっても知名度がないから意味がない」など、なかなか通りませんでした(笑)。
入山:そんな中、どうやって顧客理解活動を行ったのですか?
梅津:まずはお客様の息遣いや表情を感じようと考えました。ハルメクはダイレクトマーケティングの会社で、お客様と直接つながれるのが強み。
定性情報(意識や行動の背景にある理由や感情)を取ろうと考え、神楽坂にあるハルメク おみせに通うことにしました。
「5分だけお話聞かせてください」とエレベーター横で声をかけて、1日20人くらいに立ち話でヒアリング。そこで得た声を、社内の各部署に日々フィードバックしました。電話調査も検討しましたが、顧客を理解するには声から得た情報だけではなく、服装や化粧の仕方など視覚情報も含めないと真意やホンネは見えないと思ったのです。
「行動」を観察して本音をつかむ、独自の調査法
入山:シニア女性のインサイト(人を動かす隠れた心理)は、どうやって深掘りしているんですか?
梅津:定量調査も定性調査も有効ではありますが、情報量が多いのは「行動観察」です。
「なぜそうしているのか」「今後どうしたいのか」を引き出すために、生活や行動を実際に観察し、過去から現在、未来のニーズまで理解します。私自身、これまで顧客インサイトを専門にしてきたので、質問の仕方も大事にしています。例えば「なぜ買ったんですか?」というWHYではなく、「どこで知って、どこで好きになったんですか?」というWHEREを聞くんです。
入山:なるほど。ハルメクには「ハルトモ」という約5000人のモニター組織がありますよね。ハルトモメンバーのご自宅に行って観察することもあるとか。
梅津:普通のモニター調査だと、試作品などを使ってもらい、アンケートに答えて終わりがち。でもハルトモの皆さんは私たちとの関係性が深いので、本音や生活感のある話を臨場感たっぷりと聞かせてくれるんです。
定量調査で大きな傾向をつかむのも大事ですが、ハルトモを通じて「どうしてそう思ったのか」「どんな背景やプロセスがあったのか」まで深掘りできる。それが机上の空論ではなく、お客様目線のものづくりにつながると考えています。
「なんとなく買わない」を深堀りする生き研の調査力
梅津:2017年になると、ハルメク編集部に山岡編集長が入り、業績が徐々に回復。山岡編集長は調査を大切にされる方で、それが雑誌の業績向上にもつながりました。
業績が上向きになり予算も確保できた結果、宮澤社長から「ブランド調査をやろう」と、提案から約2年後にようやくブランド調査を実施できるようになりました。
当時ハルメクの認知率は2割に満たなかったのですが、現在では50%に迫るまでに上がってきています。今ではブランド調査も7年目となり、着実に成果を重ねています。
入山:ハルメクって「お客様の声を聞くから伸びた」とよく言われますよね。調査はどこの会社もやっていますが、本当に難しいのはどこまで徹底できるかだと思っています。
梅津:そうですね。以前はファンの方ばかりに話を聞いていました。でもそれだと「ハルメクの良いところ」しか見えないんですよね。
だから今では、離脱した人や雑誌は買ったけど通販は使わなかった人など、耳の痛い話を積極的に聞くようにしています。
特に難しいのは「なんとなく買わない」という理由を掘り下げること。アンケートだけでは出てこないので、実際の暮らしを観察しながら「何に困っているのか」を捉えるようにしています。なので、あの手この手で話を聞くことが本当に大事なんです。
入山:そのいい意味でのしつこさがハルメクの成長の一因で、生き研が担う大切な役割だと思うんですよね。
梅津:今も事業部の人たちに掘り下げる調査の進め方を伝えています。でも、難しいテーマの調査はやっぱり生き研に声がかかるんですよ。物販の「なぜ売れないのか」「なぜF0、F1層が引き上がらないのか」など、課題になっているテーマはしつこく調査しています。
入山:生き研は、ハルメク社内のコンテンツ開発や商品価値向上はもちろん、社外企業との取引にも力を入れていますよね。
梅津:そうですね。シニア市場は担当者含めて誰も経験をしていないので、どうしても思い込みでアプローチしてしまうケースが多々あります。そこで、さまざまなノウハウを積み上げてきた私たちにご依頼いただくケースが増えていますね。
例えば、福祉車両について某大手自動車会社のお手伝いをしたり、大手食品・飲料メーカーさんとハルトモ(ハルメクのモニター)を交えて一緒に商品開発に携わったり、位置情報ゲームをシニアにどう普及していくかについてゲームメーカーさんと考えたり、多種多様な企業の支援をする機会に恵まれています。
一つの事例としては、眼鏡市場さんとシニア女性向けの眼鏡「Igrace(アイグレース)」があります。ご担当者さんは、高齢者向け商品はあるけれど、ニーズと合っていないのではないか、という課題をお持ちでした。目に関するペインや眼鏡に求めるニーズを把握するところから始めてハルトモと一緒に共同開発しました。
「生き研」を武器に、広報も一丸で発信力アップ
入山:実は私、転職面接時に「広報戦略の1つとして生き研の調査リリースを武器にシニア世代の第一人者になることを目指します」とプレゼンしたんです(笑)。調査リリースはそれ以前から少しずつ出してはいましたが、当時はあまり優先されていなかったですよね。
梅津:2021年に入山さんが来てから「数を打つ」スタイルに一気にシフトしましたね。広報としては外部への情報発信がメインでしたが、生き研としては社内への“逆輸入”のつもりで取り組んでいました。
社内の現場担当者が必要なときに検索して、生き研の調査にたどり着ける状態にしておけば、「やっぱり生き研だね」と存在価値を高められる。だから意識的に、いろんな視点から、数多くのリリースを出すようにしています。
入山:広報としても生き研の調査を積み重ね、ストックしていくことが大事だと思っていました。当時から検索したときに「シニアについて何か調べると、いつも生き研の調査が出てくる」状態を作りたいと思い取り組んでいました。
最近ではメディアから「こういう企画をやりたいが、この調査リリースを利用して良いか?」と問い合わせが来るようになり、狙っていたことがちゃんと形になってきたなと感じます。
あとは梅津さんが提案しては却下されていた「シニアトレンド発表」も、どうしてもやりたくて(笑)。
梅津:それまで、私が当時のハルメクWEB(現:HALMEK up)で勝手に年末特集として「今年のシニアトレンド」を小さくやっていたのを、入山さんからトレンド発表のようなものに大きくできないかと相談を受け、最初の1年目はこっそりとやる形でしたが……(笑)。会社の会議室を使って初めての記者向け発表会をやりましたね。
入山:発表会で詳細を知った宮澤社長からは「もっとレベルの高い発信を」と終了後に叱咤されましたけど(笑)、結果としてはメディアの人も大勢来ていただいて、「ハルメク=シニアを熟知している会社」という印象をメディアの方々に認知していただいたのは大きかったですね。今年の12月で5回目になりますが、より良いものにしていきたいですね。
ハルメクはもともと雑誌一本でメディアに取り上げられてきましたが、それだけでは弱い。広報としては、1本足を2本、3本に増やしたいと思っていました。その第一弾が生き研でした。
顧客理解を徹底している証明であり、社内に自前のシンクタンクがあるのは大きな強みです。調査リリースは広報としてはよくやる手法ではありますが、大半の企業は都度外部のサービスを利用して調査しています。
生き研という常にシニア層をウォッチし続けているシンクタンクが調査リリースを発信してくれる環境というのは、広報から見ると「こんな贅沢な環境はない」と思っています(笑)。
生き研チームは個性派ぞろいの“アベンジャーズ”
入山:今の生き研のメンバー構成は?
梅津:6人です。私は定性畑でヒアリングするスタイルが中心なので、データ解析が得意なメンバーを意識的に採用してきました。
入山:アベンジャーズみたいに、それぞれが強みを発揮するチームですよね。
梅津:(笑いながら)そうですね。バランス型の人もいますし、データ分析に強いメンバーもいて、本当に一人ひとりが個性的。最近ようやくメンバーの紹介文をまとめたんですが、全員「キャラが立ってるな」と感じています。
入山:今回「消費の主役は60代 シニア市場最前線」(同文舘出版)という本を上梓しましたが、この本の出版の狙いについて一言お願いします。
梅津:60代って引退モードでも節約志向だけでもない。自らのトレンドさえ創り出している。そんな生々しいシニア像を、他の年代やシニアマーケティングを担う企業のマーケターや経営層に知ってもらいたいというのが出版の動機です。
ハルメク世代の人たちは、実は社会や家族の中心で、日本の消費の主役です。だから、この世代が幸せになれる商品やサービスがあれば、今よりもさらに輝けて、幸せになれる。中心である方々がもっと幸せになれば、経済も活気づいて、社会全体も元気になると思っています。
入山:最後に梅津さんご自身として、今後、生きかた上手研究所をどう育てていきたいと考えていますか?
梅津:今は毎年トレンド発表会をやって1年ごとの動きを積み上げていますが、その蓄積自体が大きな資産です。今後はもっとレンジを広げて、20年後、30年後のシニアの未来を予測して、創造して発表したい。
例えば今30〜40代の人が50代になる頃、どんな社会や価値観、トレンドが生まれているのか。出生率もどんどん下がっていますが、未来を悲観するだけじゃなく、「こういう新しい視点や可能性がある」という明るい未来予測を示せる研究所にしたい。
より大きな視野でシニアの未来を描ける場所に育てていきたいと思っています。
出版記念セミナーを開催
インタビュー後の7月11日、TKPガーデンシティPREMIUM秋葉原で出版記念セミナーを行う梅津さんの姿がありました。
シニアマーケットでビジネスを展開する170名以上の参加者が会場を埋め尽くし、熱気に満ちた2時間のセミナー。生き研の「新人類シニア」の消費行動分析では、「推し活」「ラスト〇〇消費」といった具体的なキーワードが飛び出すたびに参加者からはリアクションが起こり、特に60代の価値観クイズでは会場が大いに盛り上がりました。
データと事例を交えた実践的な内容に、参加者は熱心にメモを取る姿が印象的で、クイズ回答のグループ内でも活発な議論が交わされました。
令和を生きる60代のリアルなインサイトを学べました!と笑顔で会場を後にする人、今後の相談を持ちかける人や参加者全員にプレゼントされた書籍を片手に記念撮影をする人など、参加者はそれぞれ満足度の高い様子が見受けられ、生き研のこれからの歩みに注目が集まるセミナーとなりました。
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編集・構成=志保(ハルイロ編集部)ライター=梅津美希
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