【食に関する意識・実態調査 2025】物価高が続くなか、シニア世代は暮らしに合った工夫で価格高騰に対応 食品選びで重視するのは「価格・コスパ」の一方、70代の女性は「国産・安全性」を優先 年齢が高くなるほど「たんぱく質志向」が高まっていることが明らかに
株式会社ハルメク・エイジマーケティング
女性誌販売部数No.1(※1)雑誌「ハルメク」などのマーケティングやリサーチのコンサルティングを通じて、50代以上のインサイトを日々探求する、ハルメク 生きかた上手研究所は、全国の男女20~89歳を対象に「食に関する意識・実態調査」をWEBアンケートにて実施しました。
(※1)日本ABC協会発行社レポート(2024年7月~12月)
調査結果のポイント
- 物価高を反映し、食品選びで最も重視するのは「価格・コスパ」。ただし、70代の女性は価格よりも「国産」「安全性」を重視。物価高対策として購入価格帯を下げる、購入頻度を減らすほか、パンなどを手作りするといった暮らしに合った工夫で対応。
- 「おいしさ重視」から「健康重視」にシフトするのは60代の女性から。健康を意識した食生活により、自分を健康だと認識する割合も高かった。
- 年齢が高くなるほど「たんぱく質志向」が高まり、肉や魚が主なたんぱく源になっている。
【調査背景】
ハルメク 生きかた上手研究所は、シニアのインサイトについて調査・分析を行っています。ここ数年の物価高により、食品の選び方や食生活にも変化があるようです。今回は20代から80代の男女を対象に、食品選びの重視点、摂取したい栄養成分などについて調査しました。
【調査概要】
調査方法:WEBアンケート
調査対象・有効回答者数:全国の男女20~89歳・1400名
調査実施日:2025年2月21日(金)~2月24日(月)
調査主体:株式会社ハルメク・エイジマーケティング ハルメク 生きかた上手研究所
※ 調査結果のパーセンテージは、小数点以下第2位を四捨五入したため、総数と内訳の合計が一致しないことがあります。
※ 本リリース内容を掲載いただく際は、出典「ハルメク 生きかた上手研究所調べ」と明記をお願いいたします。
※ 調査主体の「ハルメク 生きかた上手研究所」所長への取材、コメント提供も可能です。
食品選びで最も重視するのは「価格・コスパ」。ただし70代の女性は価格よりも「国産」「安全性」の重視度が高い。
- 食品を選ぶ・購入する際の重視点1位は「価格が安い、コスパが良い」。70代と80代の女性を除く性年代で1位だった。特に高かったのは40代と70代の男性。
- 2位は「味が良い」。特に60代の女性が高く、全体を約10ポイント上回った。
- 3位は「国産」、4位は「バランスよく栄養を摂取できる」、5位は「安全性(無添加、無農薬など)」だった。いずれも年齢が高いほど割合も高い傾向。
- なお、70代の女性は「安全性」、80代の女性は「味が良い」が1位だった。70代の女性は「国産」「安全性」が全体の2倍以上のスコアだった。
- 最近1年間で買わなくなった・購入価格帯を下げた食品は米をはじめとして幅広く、対策としては「質を落とす」「頻度を減らす」のほか、「自分で作る」などの工夫も見られた。
■ここ1年で買わなくなった・購入価格帯を下げた食品と理由(自由回答抜粋)
米・パン
- 米の価格上昇のため、購入価格を下げた(女性37歳)
- おにぎり。コスパが悪くなったから(男性59歳)
- 惣菜パンなどは食べる回数が減った(男性20歳)
- 値上げでパンを買わなくなった。自分で焼くようになった(女性66歳)
肉・魚・野菜
- 価格が大幅上昇した野菜。カット野菜等を利用し購入量を調整することが増えた(男性41歳)
- 日本産の肉を買わなくなった。食費がかさむので外国産の肉に変えた(女性62歳)
- 肉・魚・野菜の質をなるべく落としている(男性86歳)
乳製品
- 牛乳が値上げしたため、安い加工乳に変えた(女性51歳)
- ヨーグルト。カスピ海ヨーグルトを再び作り始めたから(男性64歳)
菓子
- お菓子は低価格のもので満足感を得るようにしている(女性28歳)
- ポテトチップスなどのスナック菓子(男性76歳)
「おいしさ重視」から「健康重視」にシフトするのは60代の女性から。健康を意識した食生活により、自分を健康だと認識する割合も高かった。
- 普段の食事における重視点として最も高かったのは「自分自身の健康」。男女とも50代までは2~3割程度だが、男性は70代以降、女性は60代以降で急上昇し、男女とも80代が最も高かった。
- 2位は「おいしさ」。男性は40代、女性は30代をピークに年齢とともに低下。女性は50代までは「おいしさ」が「健康」を上回るが、60代以降は「健康」が圧倒的に高い。
- 3位は「自分以外の家族の健康」で、特に50代の女性が高かった。
- 健康だと感じている割合(「健康だと思う」+「やや健康だと思う」割合)は、全体で53%。最も高いのは男女とも70代だった。食事の重視点で「自分自身の健康」が50代から60代の女性にかけて上昇したのと同様、健康だと感じている割合も50代から60代の女性の上昇が大きい。
年齢が高くなるほど「たんぱく質志向」が高まり、肉や魚が主なたんぱく源に。
- 食事から摂取したい栄養成分1位は「たんぱく質」だった。特に高いのは80代の男性、70代の女性で約7割。30代以上の男性、50代以上の女性で1位だった。
- 2位以降は「食物繊維」、「カルシウム」、「ビタミンC」、「鉄」の順。TOP5はいずれも年齢が高いほど割合も高い傾向にある。
- 夕食に食べているものを見ると、肉・魚・大豆製品といったたんぱく質を多く含む食品において、高齢層になるほど食べている割合が高い傾向が見られた。卵は70代の男性が高かった。
【専門家の見解】
ハルメク 生きかた上手研究所 所長 梅津 順江(うめづ ゆきえ)
2016年3月から現職。主に年間約900人のシニアを対象にインタビューや取材、ワークショップを行い、誌面づくり・商品開発・広告制作の糧になるインサイトを探り、アンケートを介して半歩先の未来を予測している。
節約しつつ、知恵と工夫で満たす! 50代以上の「たんぱく質生活」
今回の調査から、50代以上の女性の食意識に2つの潮流が見えました。ひとつは「物価高騰」への向き合い方、もうひとつは「たんぱく質志向」の高まりです。
まず、物価高騰に関する影響は年代問わず色濃く表れています。食品選びでは、全体の約4割が「価格・コスパ」を重視しており、家計への影響の大きさが伺えます。ただし、対応には世代ごとの“らしさ”が見られました。若年層では「購入価格帯を下げる」、つまり“質より価格”で支出をコントロールする傾向がある一方、50代以上では“自分なりに工夫する”姿勢が伺えます。たとえば、「パンを自分で焼くようになった」、「価格が安定している豆腐・こんにゃくを買う機会が増えた」といった自由記述からは、節約しながらも安心感や質を保とうとする意識が垣間見られます。料理経験が豊富な世代は、単なる節約だけでも、すべてを自炊に切り替えるわけでもない柔軟な対応をしているというわけです。暮らしに合った“選び方の工夫”で物価高に向き合っている様子が浮かび上がります。
次に、たんぱく質への意識の高まりです。50代以上の女性すべての年代で「食事から摂りたい栄養成分」としてたんぱく質が1位となっていました。高齢期に向かう中で筋力や骨量の維持が健康のカギとなるためと考えられます。ひと昔前の「お肉は控えめに」といった“食の迷信”があった世代ですが、今の50代以上は「たんぱく質をしっかり摂ろう」と肉や魚に前向きな姿勢を見せています。特に60~70代女性では、「たんぱく質を摂るために肉や魚を食べるようになった」、「大豆製品を多く摂るようになった」という記述もあり、知識と行動が結びついてきた印象です。
高まる健康意識と物価高騰への現実的な対応。この2つが交差するところに、「今の自分が満足でき、かつ時代に適した賢い食材選び」が見えてきます。50代以上の女性は、食を単なる“消費”ではなく、“選択と工夫”の場へと捉え直し始めているようです。
記事をシェアする