創業物語vol.2:創業者の隣から、会社の未来へ──上村さんとハルメクのあゆみ
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雑誌『いきいき』(1996年3月創刊)から『ハルメク』へ。29年の歴史は、いつも人の物語とともにありました。
新連載「創業物語」では、創業期を知る社員の声を通して、その歩みをたどります。第2回は、ハルメクの前身であるユーリーグの創業者と共に歩んできた社員番号3番・上村さんです。
21世紀を見据えて“ユーリーグ”に込めた創業の願い
編集部:創業者との関わりは、1989年のユーリーグ創業後ではなかったそうですね。
上村:そうなんです。実は創業者との関わりはもっと前からあって。通信教育の出版会社にいた頃、新規事業を一緒にやってたんですよ。「高校の通信講座を終了し、大学に入学した学生に何を届ける?」ってテーマで、生まれたのが大学生向けの雑誌。生活情報コンテンツと一人暮らしのための通販を組み合わせるという企画でした。
編集部:なるほど。出版社でありながら小売業でもある、まさに今のハルメクにつながる“原型”がそこで生まれたのかもしれませんね。。その後、創業者がユーリーグを立ち上げることになりますが、社名の「ユーリーグ」には、どのような意味が込められているのでしょうか。
上村:「U」には二つの意味を込めたと聞いています。一つはアルファベットの21番目で、21世紀を意識したんです。もう一つは「ユニバーシティ」のU。これは創業当時、大学向けの事業を行っていたことに起因しています。「League」は仲間とか連帯。新しい時代を一緒に作る仲間でありたい、っていう思いですね。
編集部:でも、最初は一緒に船に乗らなかったんですよね?
上村:先輩後輩のような距離感で、学ぶことも多かった。ただ、当時は採算に合うのかどうか判断がつかなかったので、古巣の広告業界が確実だと考え、そちらの道を選びました。
編集部:それでも完全に離れたわけでは?
上村:広告業界に戻ったあともつながりは続いていて、初代の編集長を創業者に紹介したりもしました。
サブカルの現場で鍛えられた人で職人気質で編集力を持ちながら、最前線でみなを引っ張るというよりも裏方でみなを支えて雑誌を作る方でした。人前に立つのが得意な創業者との相性は抜群でしたね。「読者の背中をそっと押す」ような編集方針も、新しい雑誌の方向性にぴったりでした。
外から見つめた創業期、そして再び共に歩むまで
編集部:2002年にユーリーグに加わられた経緯を教えてください。
上村:創業者から「一緒にやらないか」と声をかけられて。広告の制作会社、代理店、クライアントと経験して来ていたので、「事業の立ち上げ」に挑戦してみたいと思い参画しました。最初は「マーケティング本部長」で広告まわりを担当しました。新聞広告の出稿や代理店との交渉とか。
そのうち「コールセンターも」「通販の副編集長も」「物流倉庫も」って、どんどん役割が増えて(笑)。最終的には副社長として、「いきいき」の編集以外はほぼ全部やってましたね。
編集部:まさに“何でも屋”ですね。
上村:当時は記事から商品が生まれることが多かったんです。「カシミヤを売ろう」と決まると、編集者もコールセンターも物流も、みんなで現地に行く。糸の質も生産工程も、自分の目で見て体感して、お客様に語れるようにする。
全員が同じ体験をしてるから、説得力があったし、お客様に胸を張ってお伝えできました。
銭湯と徹夜が当たり前、“学校みたいな会社”
上村:創業者は基本姿勢を語り、新卒社員に直接教えていました。初代編集長からは「インタビューは必ずベタ起こし! 編集者の判断で勝手に省略してはいけない」と徹底的に基本を叩き込まれたね。その様子は学校で教える先生と生徒みたいでした。
夜遅くまで机に向かい、全員で学ぶように働く。大人になってからも学校に通っているような、不思議な感覚。もちろん今思えばハードでしたよ。夜は洗面器持って銭湯行って、ビール一杯ひっかけてまた会社に戻る。翌朝出社すると、床で寝てる同僚にぶつかる(笑)。でもその頃は誰もつらいと思ってなかった。むしろ夢中で楽しかったですね。
畑の土から生まれた「にんじんジュース」誕生秘話
編集部: ロングセラー「にんじんジュース」にも関わられたそうですね。
上村: 当時、とある医師が「世界中の難病クリニックでは朝に必ずにんじんジュースを飲んでいる」と書いた記事が話題になっていました。ただし条件があり、「有機栽培のにんじんでなければダメ」だと。そこで全国の有機農家を訪ね歩き、栽培の難しさや苦労を直に伺いながら、農家同士をつなぐネットワークを少しずつ広げていきました。
編集部: 市場に「にんじんジュース」そのものがなかったそうですね。
上村:だからこそ作ってみようと。最初はにんじんとジューサーをセットで販売してみたりしましたが、すぐに形にはならなくて……。それでも編集の工夫を重ねながら、諦めずに続けたんだよね。今でもそうだが、良い記事が書ければ商品が売れるという実感があり、編集者が取材した記事から商品が生まれることが多かった。
編集部: 実際に畑にも足を運ばれたと伺いました。
上村: 印象的なのは畑の土。ふかふかでシャベルを入れるとミミズがわんさか出てくる。「生きてる畑」ってこういうことかと感動しました。そういう体験を記事に書いて伝え続けたら、「これじゃなきゃダメ」と言ってくれるお客様が増えて、20年以上続く商品になりました。
編集部:商品を生む過程そのものが、「読者や生産者と一緒につくるハルメクらしさ」につながっていますね。
上村:問屋や商社を介さず、生産者と直接つながり、顧客の声を届ける。すぐに成果は出なくても「諦めない」。そんな積み重ねがハルメクの強みなんじゃないかな。当時は読者からの投書がきっかけで商品開発につながることもあった。生産者にも「いきいき」を読んでもらい、品質維持の重要性を繰り返し伝えたりもしていました。
民事再生の壁を越えて守り抜いた“人と読者”
編集部:特に「転機」として心に残っているのはどの瞬間でしょうか。
上村:やっぱり2009年の民事再生。あのときは「会社をつなぎ止めたい」という思いだけで走り続けていました。取引先に足を運び、支払いを少しでも猶予してほしいと何度も頭を下げて。数日でも数週間でも猶予がもらえれば、会社は必ず次につながると信じていたんです。
編集部:社員や読者にとっても、大きな局面でしたね。
上村:そうですね。「読者を減らしたくない」「社員を辞めさせたくない」その一点だけが支え。幸い、職場を去る人はごく少数で、読者数も大きく落とすことはなかった。皆さんに支えられたことは忘れられません。
編集部:なぜ、読者が離れなかったのでしょうか。
上村:ハルメク(当時、いきいき)という存在が、読者にとって生活の一部になっていたからだと思います。雑誌や商品に込められた思い……。「これがなくては困る」という気持ちを生み出していたのでしょう。
編集部:その後の宮澤社長体制では、組織も大きく変化しましたよね。
上村:財務の透明化が進み、「勘」や「感覚」で進めていた部分が、数字や論理で整理されていきました。組織としてはよりプロフェッショナルになった。「論理と感性の両輪」をどう深めるかを意識してきました。ただ、数字や論理に偏るのではなく、読者や生産者と近い距離感を保ちながら感性の面でも進化していく。それは今も大切にしている姿勢です。
原点に立ち返りながら、今を紡ぐ
上村:現在は「講座・イベント事業部」に所属し、企画全般に携わっています。アイデアを出したり、外部と交渉したり、企画を実施して検証を重ねる。他のスタッフの企画にアドバイスを加えたり、運営をサポートしたりと、裏方的に支えることも多いですね。肩書きにこだわるより、「どうすればお客様に喜んでいただけるか」を常に考えています。
編集部:「たてもの散歩」のガイドとしても長く活動されていますね。
上村:もう10年近くになるかな。毎回同じコースを歩いても、参加される読者の問いかけは違います。その瞬間「一緒に考えてみましょう」と応じ、参加者から「やっとスッキリしました」と言われたときの手応えは、何ものにも代えがたい!だから、事前に細かく調べたノートを作ります。でもそれは一方的に話すためではなく、読者の好奇心に応えるための土台。
質問を受けて答えるうちに、同じコースでも毎回違う物語が紡がれる。そうした“ライブ感”が続けられる理由なんだと思います。
未来を担う人へ──本質を見つめ、新しい挑戦を
上村:この会社って、どの部門も独立した会社になれるくらいポテンシャルがあると思うんです。実際、新しい事業が次々に生まれて、相乗効果も出てる。これからも市場を拓く余地は大きい。
中途の人には「前の職場でできなかったことにハルメクで挑戦して欲しい」と伝えています。プロパー社員には「ここでしかできない経験を楽しんで」と。お客様と直接つながれる機会が多いのは、この会社ならではの強みだから。
編集部:最後に「創業物語」として、未来の世代に残しておきたい思いをお願いします。
上村:取引先にとっては、ハルメクと関わることで新しい市場のチャンスをつかめる。読者にとっては生活に欠かせない存在であり続けたい。
そして社員にとっても、ここで働くことが人生の誇りとなるような会社であって欲しいと思います。関わるすべての人を幸せにする、その願いは創業時から変わっていません。
創業物語第2回はいかがでしたでしょうか。
創業者の隣で原型を形づくり、民事再生を経験しても「読者」が離れなかったという上村顧問の言葉から、ハルメクがこれからも読者に果たしていくべき使命が浮かび上がってきました。あの経験を通じて身につけた“論理と感性の両輪”を回し続けながら、未来へと歩みをつないでいきたいと思います。
ハルメクグループでは全国の事業所で読者と共に歩む仲間を募集しています。この記事を読んで、ご興味を持っていただけた方は、採用サイトもぜひご覧ください。
取材・編集/裕之(ハルイロ編集部) ライター/梅津美希
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